ホイッスラーのピーコックルームについて

2016083101 Copyright © 2016 Smithsonian Institution 

東京校インテリアコーディネーター専門科2年A組マギー三恵です。 

***インテリアの勉強を始めたきっかけ*** 

私がインテリアを勉強し始めたのは、お友達の依頼で美術作品の購入とそれをいかにカッコよく飾るかという事を考えて、額縁選び、壁紙選びなどをお手伝いしたことがきっかけでした。美術品をいかに映えるように飾るかという事だけを考えていると、時に施主様ではたどり着かないような大胆な壁紙を選ぶことになったりします。 

友人とサンゲツのショールームを訪れて、iPadに作品を表示しながら、これかな~あれかな~と色々な壁紙を見たあとで、幾つか最終的に選んだ壁紙の一つがその様なものでした。作品は一冊の本で、カルサービナとニジンスキーが踊った様々なバレエ作品を描いたものでした。本をばらして金と黒の同じサイズのフレームを用意し、それぞれの絵柄にどちらの色が相応しいかを事前に選んであったため、壁紙を選ぶ際には黒と金両方と相性が良いものを探しました。また作品が発表された時代のムードが感じられるものがあればさらに良しと考えて探していきました。あまり大胆じゃないものも候補としてあげて、最終的な選択は友人にお任せして帰宅しました。 

後日、完成した空間を見に友人宅を訪れた際、「こんなのもありかな~~」と言って選んだ燻金の装飾が全面に施されていた大胆なデザインの壁紙が採用されていました。「大胆なデザインの壁紙」というのはこんな感じです。アップで見ると写真でも分かるように大きくくっきりとした草花がメタリックな金で描かれています。メタリックなものですが、薄暗い部屋で遠くから見ると派手さはなく落ち着いた感じに仕上がっていました。スポットライトを浴びている部分は少し華やかに光っています。

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作品の表紙

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金縁作品を飾った様子

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黒縁作品を飾った様子

 「初めは意外な選択だったけれど、思い切ってこの壁紙にしてみたら、しっくりいって、凄く気に入ったわ。毎日通る廊下がプライベートギャラリーになり凄く存在感がある空間になりました。」というコメントを頂けて嬉しくなったものでした。

 ***ピーコックルーム***

ちょっと前置きが長くなりましたが、今回は美術作品とインテリアに関して面白い逸話がある「ピーコックルーム」を紹介したいと思います。 

http://www.asia.si.edu/filthylucre/peacock-room.asp 

ワシントンD.C. スミソニアン博物館群の中に東洋美術を展示している、フリーア美術館があります。この美術館の中に画家ジェームズ・マクニール・ホイッスラーがデザインしたピーコックルームがあります。ピーコックルームは部屋の名称となった、孔雀のデザインがベースとなり、着物をまとった大きな人物画「磁器の国の姫君」が暖炉上部に配され、広い壁面には天井まである飾り棚に東洋陶磁器が飾られた装飾豊かな空間です。

2016083105Copyright © 2016 Smithsonian Institution

19世紀後半、様々な経路でヨーロッパに渡った日本からの渡来品に多くの芸術家が影響を受け、生まれてきた作品はジャポニスムという総称で呼ばれています。この部屋の作者ホイッスラーも大の日本好きでした。着物をまとった美しい西洋美人が日本から来た様々なものに囲まれて夢ごごちという絵を沢山残しています。そんな絵画の一つである着物をまとった女性像「磁器の国の姫君」を購入したイギリスの富豪フレデリック・R・レイランドがこの絵画を飾り食堂として使用していた部屋がこのピーコックルームです。 

ホイッスラーは、自身の作品の良さを引き立たせる為に、自分の美意識に従って、依頼されていない大胆な装飾変更をオーナー不在の間に部屋に加えてしまいました。喜んでもらえるどころか、その変更はオーナーを怒らせてしまい支払いを拒まれるほどだったそうです。壁面に後にホイッスラーが描いた孔雀は芸術家とパトロンが対立して戦っている姿を示しているとか。ホイッスラーとの関係は壊れたままでしたが、あっという間にピーコックルームはヴィクトリア時代の芸術世界で装飾芸術の逸品と呼ばれるようになり、結局レイランドはそのまま食堂を使い続けたそうです。 

詳しい経緯は2014年に横浜美術館で開催されたホイッスラー展で紹介され、こちらのブログに日本語で詳しく解説されていますので、興味のあるかたは参考にしてくださいね。

http://cardiac.exblog.jp/23853878/ 

インテリアを勉強している私達は最終的には、お客様に喜んでいただける空間をデザインすることを心掛けないといけませんが、ホイッスラーのピーコックルームの独特な世界観に触れると、自身の美意識を貫いてこんな作品を残してくれたホイッスラーに感謝したい気持ちが湧いてくるのは皮肉ですね。 

1877年に完成したピーコックルームはその後、ホイッスラーのパトロンであったフリーアが1904年に買い取り、デトロイトにあった自身の自宅で使用していました。フリーアの死後米国政府にフリーアのコレクションが寄贈され、ワシントンD.C.に新設したフリーア美術館へと移動され現在に至ります。 

2013年ピーコックルームを21世紀の解釈で再構築した画家ダレン・ウォーターソンの作品Peacock Room REMIXというインスタレーションが発表され話題になりました。個人的にはオリジナルのままで良いのにと思いますが、こういう作品を発表してくれることで、埋もれた名品の価値を再確認し、現代を生きる人々に再訪する機会を与えてくれたと思えばそれもありかな~~と感じます。 

http://www.asia.si.edu/filthylucre/ 

フリーア美術館のコレクションは門外不出という取り決めがあるため、あまり日本では知られていません。現在フリーア美術館は修復中ですが2017年10月に再オープンが予定されています。アメリカ東海岸に旅行する機会がありましたら、是非覗いてみてください。

http://www.asia.si.edu/ 

              インテリアコーディネーター専門科2年A組 マギー三恵